●人間は哀れである: 東海林さだお著、平松洋子編、ちくま文庫、2021年12月発行、880円(税込み968円)
ショージ君こと、東海林さだおさんが亡くなった。
自分の食いしん坊歴に、漫画家でエッセイストであるショージ君の存在は欠かせないものだ。
私のバイブルは、高校生の頃に書店でふとみかけたショージ君の「料理大好き!」。
手にしてから数十年間、何度も何度も読み返した一番思い入れの深い本である。

そして、長年連載が続いた丸かじりシリーズも多数愛読してきた。
ショージ君の食に関するエッセイは、高級店や豪華料理のグルメ本では決してない。
ちまたに存在する、ごくごく普通の庶民の料理や食材、味などについての考察なのである。
鋭い人間観察と深い洞察力のこもった文章は、読むものを引き込ませる魅力があった。
食以外のエッセイも人として当たり前のこと、言い方を変えると、どうでもいいことやしょうもない日常を、とても深く考察していた。
そして、何よりショージ君のエッセイに欠かせないものが、文章に挿まれる楽しいイラスト漫画の数々である。
ショージ君は漫画家であるから、他のエッセイストにはない最大の武器を持っていたのだ。

今回の訃報に対して、追悼文が読売新聞に掲載されていた。
晩年とても仲良しだったという平松洋子さんが書かれたものである。
★読売新聞オンライン<いや~人間は何をやってもおかしいね…東海林さだおさんを悼む エッセイスト、作家 平松洋子>:https://www.yomiuri.co.jp/culture/book/articles/20260420-GYT8T00229/

ショージ君の決まり文句のひとつが、「人間は何をやってもおかしいね」とのこと。
理不尽と不本意をかかえつつ、「ま、いっか」と生きる人間の性のなかに「おかしみ」と「哀れ」を見出した、と書かれてあった。
まさにこの、おかしみと哀れのあるショージ君の執筆した数々のエッセイに、自分は若い頃から影響を受けていたのだと、あらためて気づく。

88歳の大往生。
最後まで仕事を全うし、とんこつラーメンを食べ、ビールを飲んだというショージ君。
長年楽しませていただき、本当にありがとうございました。
ショージ君が残したたくさんの本は、これから何度も読み返して、ずっと楽しませていただくと思います。
合掌。

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